序言

川越市沿革史概要 序言

川越の地たる武蔵野形勝の位置を占め帝都輦軌の下に在りて自ら藩屏を為せるの観あり 鎌倉幕府の時代に於て川越氏此の地の荘司を以て代々関東に重きを成し来りしが 足利時代に及び太田道灌築城をなし上杉北條相尋いで此處に拠り雄を関東に振へり 江戸時代に至りては幕府は此の地に有力なる大名を封じたりしも屡々藩主を交迭せしにより舊記類等概ね散逸せしを以て資料の蒐集實に容易ならざるものあり昼に岸傅平氏に本市史編纂の事を嘱せしに氏は大なる努力を拂ひ幾多の資料を渉猟參稽して遂に此の篇を成せり嗟乎本篇によりて本市変遷の跡を辿るもの豈に感慨なきを得んや唯寥々たる小冊子にして未だ委詳精確を盡さざるは遺憾とする所なり他日更に資料の蒐集整理を図りて市史の完成を期せんことを欲す茲に上梓に際し一言所感を叙し冠首に弁ず

昭和七年八月
川越市長早川金十郎